活用スキーム③ 事業承継対策
事業を行っている社長様から、以下のご心配をお聞きします。
- 相続税対策の必要があるが、株式譲渡により権限が移ってしまうのは困る
- 自社株は子どもに分散させずに、次期社長である長男の家系に引き継がせたい
ここで活用できるのが、家族信託です。
事業主様が相続対策を検討される場合、相続税対策として財産を贈与したいが贈与税額が高額である、自社株や事業に必要な資産を子どもに分散させてしまうのは困る、といった問題が発生します。
家族信託は、社長である親から子どもへの承継を、可能な限り贈与税を抑えて行う方法です。
さらに、生前に親の資産を子ども名義に変更をしますが、自社株の議決権を実質上保持するための指図権を親の死亡までは付与をしておくことを契約に記すこともできます。
また、自社株や事業用資産を長男に集約させたいなどの遺産分割方法も指定することでスムーズな事業承継が可能です。
状況
Dさんは会社経営をしており、自分が引退後は息子に会社を継がせたいと考えています。そこで、自社株式を息子に譲っていきたいのですが、現時点で全ての株式を譲渡してしまうと、贈与税が高額になってしまいます。また、現時点で息子に経営権を全て持たせるのは、時期尚早だとも思っています。一方、自分の体調が悪化していることも踏まえて事業承継対策を検討しています。
家族信託の設計
Dさんの目的は、相続税対策を行いながら最終的に息子に事業を引き継がせることです。
お父さんの持つ不動産、預貯金、株式を信託財産とし、委託者をお父さん、受託者を息子、受益者をお父さんに設定します。自社株の受益権は、配当を受ける権利で、自社株の管理運用、議決権行使のような経営に関する権利が息子さんに移ることになります。
家族信託のポイント
委託者、受益者ともにお父さんである今回のような場合、贈与税が課税されないメリットがあります。
配当を受ける権利は息子さんに譲り、経営権はお父さんに残す方法もあります。あるいは、議決権行使等については、お父さんが息子さんに指図する権利(指図権)を設定する方法もあります。これらの場合は、受益権の移転に対して贈与税が発生します。ですので、自社の株価の低いときを見計らって実行する必要があります。
多数の株式を保有している場合、認知症になってしまい議決権が行使できないのは大きなリスクとなります。一方で、息子さんに経営権を全て委譲させるにはまだ早い場合は、上記のように、実質的な経営権をお父さんに残すことも可能です。